プレスリリース

世界を変える、独創を讃える。『第1回 神戸賞』初の受賞者が決定!

リリース発行企業:公益財団法人 中谷医工計測技術振興財団

情報提供:

公益財団法人 中谷医工計測技術振興財団(東京都品川区/代表理事:家次恒、以下「中谷財団」)は、財団設立40周年を記念して創設した新たな学術賞『神戸賞』の第1回受賞者決定をお知らせします。





 『神戸賞』とは、今後日本がリードしていく分野として注目している「BME(Bio Medical Engineering)分野~生命科学と理工学の融合境界領域~」においてイノベーションをもたらす優れた独創的な研究で実績を挙げた研究者や、そのユニークな研究で将来性が嘱望される若手研究者に光を当てる新たな学術賞です。中谷財団設立40周年を記念して創設され、今回が初の受賞者発表となります。

 また、6月1日には神戸ポートピアホテルにて設立40周年記念式典と合わせて第1回神戸賞の授賞式をおこないます。
大賞 受賞者(1件、賞金 5,000万円、副賞 トロフィー)



氏名 :浦野 泰照
所属/役職 :東京大学大学院薬学系研究科、同医学系研究科教授
研究題目 :オリジナル蛍光プローブの精密開発とその活用によ      
         る、革新的生体・医療イメージング技術の創製
受賞理由 :生体内で特定の細胞や生理活性分子を生きたまま可視化するバイオイメージング技術は、病態の解明や創薬、先端研究において不可欠であり、そのキーとなる物質が、目的の細胞や生体分子を光らせる蛍光プローブと呼ばれる分子です。

 浦野氏は、従来トライ&エラーであった蛍光プローブ開発において、
独創的かつ論理的な精密分子設計法を多数確立し、これらを駆使して実用的な蛍光プローブを多数開発することに成功してきました。例として、世界で初めて確立した光誘起電子移動に基づく可視光励起蛍光団の蛍光特性精密制御法からは、Tokyo Green 骨格など新規蛍光団に基づく蛍光プローブを生み出しました。

 また、分子内スピロ環化制御に基づく新たな分子設計法から、自発的に明滅を繰り返す生細胞超解像イメージングプローブ開発に世界に先駆けて成功し、基礎生物・化学関連領域に大きなインパクトを与えました。
さらに、浦野氏は、独自の技術を実践的な医療へ昇華させることを狙い、国内外の臨床外科医と連携し、プローブ溶液を噴霧するだけで1ミリ以下の病変を検出できる術中迅速がんイメージング技術という化学と医療の新たな融合領域を開拓しました。これらは現在、臨床試験、薬事申請が行われております。

 加えて、がん細胞のみを選択的に殺傷するプロドラッグ型低分子治療薬、核医学イメージング薬の開発など、独創的な発想に基づく化学プローブ開発とその生物学・医療応用成果において、浦野氏は世界に大きなインパクトを与え続けています。
Young Investigator(Y.I.)賞 受賞者一覧
(3名、賞金 500万円、副賞 研究助成金4,000万円(5年間)、トロフィー)



氏名 :武部 貴則
所属/役職 :大阪大学 大学院医学系研究科 教授
         同ヒューマン・メタバース疾患研究拠点 副拠点長
         東京医科歯科大学 統合研究機構 教授
         横浜市立大学 コミュニケーション・
         デザイン・センター長
研究題目     :マイ・メディシン実現に向けた
         戦略的多能性幹細胞研究
受賞理由    :臓器移植には臓器の絶対的な不足という大きな課題があります。これに対し武部氏は移植の代替手法を目指し、幹細胞を培養して自己複製、分化、自己組織化させるオルガノイドの研究に取り組み、光工学・生化学手法を駆使した培養基盤を用いて、細胞の動態を数理学的に解析し、自己組織化を制御する原理を解明しました。

 次に、これをES細胞やiPS細胞に適用し、血管を含む多細胞系譜が複雑に構造化されたオルガノイドを作製する基盤技術を確立し、致死的な肝疾患治療への応用や隣接器官接続への道筋をつけました。一方で、こうしたオルガノイド制御技術をベースに、肝炎や重症COVID-19などの疾患状態を再現できる世界初の疾患オルガノイドシステムを構築し、疾患発症と個別化医療につながる遺伝的要因を解明しました。
 臓器置換、創薬開発、個別化医療、予防医療を目指し、6つのスタートアップ会社を立上げ、一部は臨床試験を実施中です。一人一人の人間に向き合ったマイ・メディシンの実現をビジョンに、バイオデジタルツインにも取り組み、ヘルスケア領域での革新的ブレークスルーが期待されています。


氏名 :太田 禎生
所属/役職 :東京大学 先端科学技術研究センター 准教授
研究題目    :高速・非破壊な光生命解析を人知から解放する
         Learning Cytometry技術群の開発
受賞理由     :多数の細胞を形態や蛍光などの画像情報で分類、分取する細胞解析装置セルソーターは、生命科学の研究分野で多く使用されていますが、感度、速度と識別精度の両立に課題を有しています。太田氏は、画像が構成される前の電気信号を直接解析して識別するという極めて独創的な逆転の発想(ゴーストサイトメトリー、GC)を軸に、光、流体、電気、AI技術を高度に組み合わせることで、コストを削減し、より高速化、高精度化した世界初の画像情報識別型高速セルソーターを実現しました。

 また、細胞に色素等の前処理をせずに、内部の屈折率のデータをAI解析して細胞を識別するデータ駆動型Learning CytometryによるラベルフリーGC技術も確立しました。以上はScience誌など権威ある学術誌に掲載されましたが、太田氏はさらに、日米を拠点とするシンクサイト株式会社を創業して実用化に挑戦し、2023年に装置を上市しました。現在もAI駆動サイトメトリー技術群を次々と開発しており、まさに独創的な融合研究を牽引する次世代の医工学分野のリーダーの一人といえます。


氏名 :加藤 英明
所属/役職 :東京大学 先端科学技術研究センター 教授
研究題目     :光遺伝学技術の分子基盤解明およびその高度化
受賞理由     :眼の中で視覚を担うタンパク質であるロドプシンは、光を認識し、視神経へ信号を伝える役目をもっています。中でもイオン輸送型のロドプシンは神経科学の研究分野で実験ツール(光遺伝学ツール)として脚光を浴びていますが、加藤氏は長い間、未知であったイオン輸送型ロドプシンの立体構造を次々と決定し、構造情報に基づく機能解析を行うことで、ロドプシンの分子機構の詳細を解明しました。
 また、これらの詳細な構造情報から着想を得て、分野横断的なアプローチを融合し、光の波長など狙った機能を付与した新たなロドプシンを開発しました。これらの成果は、権威ある学術誌への掲載のほか、特許にも結びついています。これらの成果は研究用の実験ツールだけではなく、網膜変性疾患やうつをはじめとする各種精神疾患、神経疾患等への遺伝子治療への昇華が期待されることから、現在、自身の研究の社会実装を目指してスタートアップ創業に取り掛かっています。
Y.I.賞ファイナリスト(Y.I.賞最終選考シンポジウム登壇者)
Y.I.賞は将来が嘱望される若手研究者を見出し、支援するための賞です。
最終候補者7名により実施したY.I.賞最終選考シンポジウムでは、各自の発表に続いて白熱した意見交換が行われました。ここにY.I.賞ファイナリストとしてご紹介し、その栄誉を称えます。



『神戸賞』 概要



『神戸賞』 審査委員一覧


[審査委員長]
柳沢 正史 (筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 機構長 教授)

[審査副委員長]
小川 誠司 (京都大学 大学院医学研究科 腫瘍生物学講座 教授)

[審査委員]
神谷 真子 (東京工業大学 生命理工学院 教授)
木下 聖子 (創価大学 理工学部 糖鎖生命システム融合研究所 教授)
斎藤 通紀 (京都大学 高等研究院 教授)
佐藤 俊朗 (慶應義塾大学 医学部 医化学教室 教授)
染谷 隆夫 (東京大学 大学院工学系研究科 教授)
田畑 泰彦 (京都大学 医生物学研究所 再生組織構築研究部門 生体材料学分野 教授)
永次 史      (東北大学 多元物質科学研究所 教授)
濡木 理      (東京大学 大学院理学系研究科 生物化学専攻 教授)
林 朗子      (理化学研究所 脳神経科学研究センター 多階層精神疾患研究チーム チームリーダー)
本田 賢也 (慶應義塾大学 医学部 教授)
三浦 佳子 (九州大学 大学院工学研究院 化学工学部門 教授)
森 勇介     (大阪大学 大学院工学研究科 教授)

[顧問]
西川 伸一 (NPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン 代表理事)
公益財団法人 中谷医工計測技術振興財団 概要


 中谷財団は、神戸に本拠を置く臨床検査機器・試薬メーカーであるシスメックス株式会社の創業者 故中谷太郎により1984年「中谷電子計測技術振興財団」として設立されました。その意思を継いだ子息の故中谷正の遺贈を受け、2012年に大きな事業が行える財団へと生まれ変わり、同年には公益財団法人に移行し、現在の財団名となりました。
 それ以来、医工計測分野の広範な発展を願い、先導的な技術開発への助成を中核として技術開発に顕著な業績をあげた研究者への表彰や技術開発に関する交流への助成等の事業を行ってきました。また、2014年以降は、若手人材育成のため、大学院生向け奨学金や大学生の短期留学サポート、さらにすそ野拡大のため、小中高校生を対象とした科学教育振興など、幅広い層への支援を実現しています。このように研究者から小中高校生まで、トータルに事業展開をする国内有数のユニークな財団となっています。2024年に設立40周年を迎え、助成分野をBME分野に拡げるとともに、新たな表彰事業「神戸賞」を創設しました。

名 称 :公益財団法人 中谷医工計測技術振興財団
英 名 :Nakatani Foundation for Advancement of Measuring Technologies in
     Biomedical Engineering
設 立 :1984年4月
所在地 :〒141-0032 東京都品川区大崎1-2-2 アートヴィレッジ大崎セントラルタワー8F
目 的 :BME(Bio Medical Engineering)分野~生命科学と理工学の融合境界領域~における
      先導的研究・開発、交流等を促進し、また人材を育成することによって、BME分野の広汎な発展を1    
推進し、我が国ならびに国際社会の発展及び生活の向上に寄与すること。
WEB :https://www.nakatani-foundation.jp/

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