尼崎の大覚寺(尼崎市寺町)で2月3日、豆まきや「大覚寺身振り狂言」などを行う「大覚寺節分会」が開催され、多くの参拝客が訪れた。
尼崎に春を告げる風物詩「大覚寺身振り狂言」は、1840年に奉納されていたという記録が残る伝統的な行事。幕末から明治にかけて途絶えていたが、身振り狂言の復活を望む有志が集まり、無言狂言「壬生(みぶ)大念仏狂言」で有名な京都壬生寺の協力を得て1953年の節分から復活した。
「身振り狂言」の出演者は一般の職業に就いている人も多く、仕事の合間をぬって練習を重ね本番に臨むという。伝統は親から子、子から孫へと受け継がれ、今では4代目となる人もいるという。
演目は「節分厄払」、「橋弁慶」、「閻魔(えんま)庁」のほか、大覚寺に伝わる琵琶法師にまつわる伝説を基にした「十王堂」、かつて大覚寺があった大物(だいもつ)を舞台に源義経と静御前の別れを描いた能楽「船弁慶」を題材にした「大物之浦」など、大覚寺の古文書や尼崎の歴史に基づく作品も上演された。
からくり人形師9代目玉屋庄兵衛(しょうべえ)さんによるからくり人形のかわいらしいパフォーマンスがあり、豆まきを今か今かと待つ参拝客を和ませた。その後、稲村和美尼崎市長も参加して豆まきが行われ、たくさんの人が豆をつかもうと一斉に手を伸ばし、「こっちにも投げて」と歓声が上がっていた。
西宮市から訪れたという女性は「昔尼崎に住んでいたので、来るたびに懐かしい。狂言を見るのが楽しみで、毎年のように来ている」と開演を心待ちにしていた。写真仲間と一緒に来たという尼崎市内に住む男性は、一眼レフカメラを手に「いい写真がたくさん撮れそうだ」と舞台に見入っていた。