尼崎市公設地方卸売市場で青果の仲卸を行う「廣瀬」(尼崎市潮江4、TEL 06-6420-2222)が子ども食堂に無償で食材提供を始め、間もなく2カ月がたつ。
廣瀬さん。「趣味は筋トレ。時間を見つけては市場のどこかで懸垂している(笑)」
「子ども食堂」は、地域の自主的な取り組みとして進む「食を通じた子どもの居場所づくり」。尼崎でも子どもの居場所として、あるいは大人・高齢者も含めた地域交流の場として30を超える事業が展開している。
子ども食堂への食材提供を行う同社社長の廣瀬伸一さんは、戦後から続く仲卸の3代目。「元々、スタッフに宝塚の福祉団体の関係者がおり、同じ団体が運営する子ども食堂のために検品落ちの野菜を時々持ち帰ってもらっていた。尼崎にも同じような子ども食堂があると知り、市場管理事務所に仲立ちしてもらって食材提供を始めた」と話す。
提供先の各団体と話し合い、食材の受け渡しは毎週火曜と金曜の指定時間内に行うことになった。食材はジャガイモやタマネギなどの野菜や果物で、形がいびつであったり表面に傷があったりなど、品質上問題は無いが店頭販売に不向きとされるもの。通常は加工業者に販売し、カット野菜などで流通している。
廣瀬さんはLINEのグループトークを使い、写真とコメントで提供可能な内容を配信。各団体の代表がそれを見て希望内容や受取時間を返信する。「パプリカが出た時は大人気で、あっという間になくなった。LINE上で団体さん同士、『これ欲しいから取っといて』などの調整もしており、なかなかうまく機能している」と廣瀬さん。
取材当日、自前の台車を押して食材を受け取りに来た武庫地区の地域食堂「晴れるや」代表の西ユミ子さんは、「本当に助かっている。JAや近所の農家さんからの協力はあるが、毎週提供してもらえるのはほかにない。安い店を探して駆け回るのは大変だった。今日もらった野菜はクリームシチューにする。クリスマス会なのでみんなが大好きなメニューにした」と笑顔を見せた。
廣瀬さんは「大変なのは子ども食堂でご飯を作っている人たち。それに比べたら大したことやあらへん。子どもたちにいっぱい食べてほしい」とほほ笑む。