JR立花駅近くの尼崎市立すこやかプラザ(尼崎市七松町1)で9月16日、「食を通じた子どもの居場所 尼崎フォーラム」が開催された。
主催は、安心して子育てできる社会を目指し2006年から子育て支援活動を行うNPO法人「子どものみらい尼崎」。「子ども食堂」は、主に貧困家庭や孤食の子どもたちに無料や安価で食事を提供する民間の取り組みで、2014年厚労省の「6人に1人の子どもが貧困」という発表を受け、2015年から全国で開設数が急増しているという。尼崎では2015年、小田地区の「まあるい食卓」が最初とされる。
フォーラムでは、子ども食堂について今夏に市内の実態調査を行った最新報告と、実際に子ども食堂や子どもの居場所を作る活動を行う3団体からの活動報告が行われた。
実態調査を行ったのは、神崎地区で同様の活動を行う「スマイルひろば」理事の小倉祐輔さん。同一の視点から現場の声を集めようと6月~9月上旬、単独で市内28カ所、32事業に参加し、子どもたちと食事を共にした。小倉さんは詳細をまとめたリストとマップを元に「運営主体はNPOだけでなく、個人、事業者など多様。市内でこれだけの数があるのはすごいこと。子どもたちの居場所がないという声や貧困問題を知り、地域のためにと立ち上がった人たちが中心」と説明。「食堂を心のよりどころとし、少人数で継続的な食堂を願う子どもたちの声がある一方で、ボランティアの気持ちとしては『楽しいねん』と『ヒッシノパッチ』の両方。子どもが心を開き、成長を見せてくれた時の喜びと、もっと時間と心の余裕を持って子どもたちと接したいのに、という気持ちとがせめぎ合っている」と現場の声を紹介した。
活動報告では、小田地区の「Viva」、武庫地区の「晴れるや」、立花地区の「七松子ども食事会」が登壇。子どもたちが放課後に立ち寄り、宿題したり遊んだりする場を提供する「Viva」は、ボランティアに加わる女子高校生2人も登壇し、年代が近いことから子どもたちとの距離感も近く、子どもたちをより細やかに観察し、悩みに答えることができるなどの利点を紹介した。特別養護老人ホームの上階で開いている「晴れるや」は、子どもだけでなく地域の誰もが集える地域食堂を目指しており、「互いに見守り、育つ」ことの大切さを訴えた。食事を十分に摂(と)れない子どもに向け「ケア付き食堂」としての役割を自認する「七松子ども食事会」は、学校給食のない夏休み中は毎日開催することや、遠足や季節のイベントなどの活動を紹介した。
「子どものみらい尼崎」理事長の濱田格子(さだこ)さんは「子ども食堂が提供できるのは、食事や食育だけでなく、人と関わることの体験、誰かとつながっている時間。家庭でも学校でもなく、誰かに迎え入れられ、一人の人間として大切にされるサードプレイス(3番目の場所)として必要なのでは」と締めくくった。