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尼崎が舞台の小説「尼崎ストロベリー」 落語・構成作家の成海隼人さん手掛ける

成海隼人さん。「母親の出身地で祖父母の自宅もあったため、小さい頃よく尼崎駅周辺を訪れていた」と話す

成海隼人さん。「母親の出身地で祖父母の自宅もあったため、小さい頃よく尼崎駅周辺を訪れていた」と話す

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 小説「尼崎ストロベリー」が昨年12月、幻冬舎(東京都渋谷区)から出版された。

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 落語作家・構成作家の成海隼人さんが、自身の体験と母親をモデルに書き上げた小説作品。阪神尼崎駅や尼崎センタープール前駅エリアが舞台となっている。

 主人公は、周囲から「博士」と呼ばれるほどのお笑いマニアな母親から、たっぷりの愛情と笑いの英才教育を受けて育った高校生・駿一。親子2人で貧しいながらも幸せな生活を送るが、ある日母親がスキルス胃がんを患い、余命宣告を受けてしまう。がんに打ち勝つ手だてを探る中、元々人間の体内にあり、がん細胞を攻撃する「ナチュラルキラー(NK)細胞」の存在を知った駿一は、笑うことで活性化するといわれるNK細胞に望みをかけ「僕は、僕の笑いでオカンを救う」ことを誓い、友人と共に漫才コンテストに挑む。

 成海さんは「母も自分もお笑いが大好きで、ネタ見せ番組を見ては批評を言い合うほどだった。実際にがんが見つかったのは僕が大学生の時。裕福ではないし、効くといわれる健康食品を試そうにも高額で手が出せない。そんな中『NK細胞』を知り、これしかないと思った。お笑いの舞台を見たりきれいな景色を見に行ったりする日々を過ごし、母は余命宣告をはるかに超える日々を生き抜いた。『抗がん剤治療が効いた』とも言われたが、僕は笑いの力があったと思っている」と振り返る。

 母の闘病や金銭的な面から、芸人になる夢を諦め就職していた成海さんだが、緩和ケア病棟に移った母親からある日「本当はお笑いに挑戦したかったんやろ?」と言われたという。「今からやってみたら?と背中を押された」と成海さん。裏方として笑いの世界に飛び込もうと「よしもとクリエイティブカレッジ(現NSC)」の作家コースへ入学し、働きながら10歳以上離れた同期と切磋琢磨(せっさたくま)する日々を送った。

 落語家の月亭方正さんへ落語の台本を送ったことがきっかけとなり、現在の道へ進んだ成海さん。「小説デビューの際も方正さんに相談し、アドバイスを頂き背中を押してもらった。今作の他にもストック作品はあったが、やっぱり最初は母との話を主題にしたいと思った。僕マザコンなんで」と笑う。

 「お客さまから『反応を直接感じたい』との思いで小説を書き始めた。本を出版し、面白いと直接感想を頂けることはもちろんうれしいが、地元の書店がコーナーを設けてくれたり、作品を読んだ方がいろんな場所で宣伝してくれたりと、さまざまな形で人との縁が広がっていることは予期せぬ喜び。本当に感謝しかない」とも。

 四六判、206ページ。価格は1,000円(税別)。

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