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尼崎の和菓子店「寶屋遊亀」創業90周年 今春から3世代で和菓子作り

「10年後は100周年。地域でイベントをやりたい」と箕浦さん

「10年後は100周年。地域でイベントをやりたい」と箕浦さん

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 尼崎の阪神杭瀬駅近くの和菓子店「寶屋遊亀(たからや・ゆうき)」(尼崎市杭瀬本町1、TEL 06-6481-1680)が創業90周年を迎えた。

箕浦さんの次男・弘脩さんを中心に3世代で開発した新商品「黒糖ろーる」

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 創業者は現社長・箕浦康之さんの祖父・新蔵さん。明治生まれで、当初は尼崎市内で漁師をしていたが、命の危険が伴う仕事であるため、将来を考えて転職を決意。「豊かさを求めていた人々に和菓子という甘い物で心豊かになってもらえたら」と和菓子店で修業した後、1928(昭和3)年に「寶屋」という名で創業した。戦時中は杭瀬かいわいを転々としていたが、現在の本店の場所で先々代から商売を営んでいる。

 1980(昭和55)年に箕浦さんの父・孝次さんが2代目に就任すると、1984(昭和59)年には「第20回全国菓子大博覧会」に「宝小槌(こづち)」を出品して名誉金賞を受賞。昭和天皇に献上した際、宮内庁から菓匠名「遊亀」を拝命し、「寶屋遊亀」と改名したという。

 箕浦さんは大学卒業後、菓子メーカーに入社して営業職を8年ほど経験した後、1998年に入店。翌年3代目に就任すると、有限会社寶屋遊亀を設立。2009年には「あまがさき阪神百貨店」に2店舗目を出店した。

 箕浦さんは「祖父にかわいがられ、子どもの頃から『次は康之が継ぐんだよ』と言われていた。店で祖父や父が働く姿を見たり、住み込みの和菓子職人に遊んでもらったり、店頭で地域の人たちに声を掛けてもらったり、この店のおかげで自分は成長できたという実感がある。大人になったら自分も役に立ちたいと思ってきた」と振り返る。

 店内には「栗まんじゅう」(135円)、「最中道縁」(158円)、「あわせ最中」(165円)、「季節のかすてら」(185円)、「季節の上生菓子」(230円)、「本わらび餅」(648円)のほか、季節の和菓子が並ぶ。箕浦さんの代になってから小豆入りの抹茶フィナンシェ「茶の趣き」(185円)や生チョコ餅「ショコラデユウキ」(バレンタイン期間限定)など洋のテイストも取り入れてきた。

 創業地である同市への思い入れは強く、地域の魅力を伝える和菓子も作る。同店のある地域に多く立ち並んでいたというわらぶきの家をかたどったまんじゅう「小田の里」(158円)、杭瀬熊野神社のみこし巡幸が40年ぶりに復活することを記念したどら焼き「神輿(みこし)」(158円)、同市100周年の際には記念ロゴの焼き印をあしらった「尼崎市制100周年どら焼き」を販売した。

 今春、他店で3年ほど和菓子職人の修業を積んだ次男・弘脩さんが入店。2代目の孝次さんは79歳ながら現役の和菓子職人であり、現在は3世代で同店を切り盛りしている。

 4月末に新発売した「黒糖ろーる」(150円、あまがさき阪神百貨店限定)は弘脩さん発案で、黒糖の蒸しパン生地に小豆入りの生クリームをサンドしてきな粉を振りかけた和風ロールケーキ。商品開発の過程では孝次さんと箕浦さんがアドバイスするなど、3世代の思いや経験が込められた一品になっている。

 箕浦さんは「伝統を受け継ぎ、次世代につなぐのは難しいこと。何が一番大事で、何を守り、何を変える必要があるのかを常々考えてきた。今後は健康に貢献できる和菓子を追求したい。病院食として提供できるものを作れたら糖尿病など病気で甘いものを制限せざるを得ない人にも癒やしや喜びを提供できるのではないか。そういった和菓子を海外にも発信・展開して、和菓子を通して人々を幸せにできたら。息子にもその精神を引き継ぎ、良い形でバトンタッチしたい」と笑顔を見せる。

 杭瀬本店の営業時間は9時~19時。

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