尼崎・下坂部に自立援助ホーム「若葉」(尼崎市下坂部1、TEL 06-6409-4315)がオープンし1カ月がたった。
リビングでは、一緒にテレビを見たりご飯を食べたりしながら過ごしているという。「『これは川西家の味』と言って料理を振る舞うことも。ここの食事が実家の味になれば」と川西さん
育児放棄や虐待などで苦しむ若者の居場所をつくろうと、一般社団法人「若葉」が開設。スタッフが当番制で常駐し、食事やお金の管理、就労支援など自立へ向けたさまざまなサポートを24時間体制で行う。15歳~20歳の女性が対象で、定員は6人。受け入れは児童相談所を通じて行う。
同団体は昨年設立。代表を川西悦子さん、副代表を野本亮一さんが務める。川西さんは、夜間に知人の子どもの行方が分からなくなり、捜索を手伝ったことがきっかけで若者支援の活動を始めた。「30代半ばから活動を始め、ずっと『いつか自分の思いを形にした支援施設を作りたい』と考えていた」と話す。活動を続ける中で、同じく若者支援に取り組む野本さんと出会い、一緒に施設を開所しようと決意。川西さん、野本さん共に自費を投じて開所にこぎ着けた。
自立援助ホーム「若葉」は、2階建て5LDKの一軒家で、1階に台所やリビング、2階に1人部屋と2人部屋各2室を設置する。常駐スタッフが入居者と一緒に食事を作って食べるなど日常生活を送りながら、一人一人に合った支援を続け自立へと導く。利用料は、就学者=月2万円、就労者=同3万円。
川西さんは「一緒にご飯を食べたりテレビを見たり、他愛のない会話をしたり。実家のような感覚で過ごしてもらいたい。スタッフみんなに共通しているのは『とにかく丁寧に育てたい』という思い。自分の育児や育ってきた環境に置き換え、日々接し方を考えている。スタッフ同士で考えや思い、経験を共有することで、新たに気付かされる部分は多い」と話す。
野本さんは「ここではとにかくゆっくり過ごしてほしい。帰る場所がある、温かい食事がある、行ってらっしゃいとお帰りを言ってくれる人がいることは大事。大切にされていることを実感することで自分を大切にでき、やがて人を大切にすることへつながる」と話す。若者支援の現場では若者へ思いがなかなか伝わらず、難しい面もあるというが、「諦めず、『この場所は絶対に裏切らない』という気持ちで関わっていきたい。社会的な環境を整え、人生の目標や夢を持った上で送り出してあげたい」と力を込める。
生活に必要な備品などはそろいつつあるものの、不十分な面もあるといい、継続的な寄付を募っている。「食料や古着など寄付いただき大変助かっているが、女性ならではの生活用品など細かな必需品がたくさんある。もちろん、入居者自身が必要だと思うものは、みんなそれぞれアルバイトをするなどして購入している」と川西さん。「食材や備品などやりくりしながら、今後は生活の質へも目を向けていきたい。食事に少しでも季節の食材を取り入れたり、カウンセリングなど体や心のケアを考えたりと、やってあげたいことを挙げれば切りがない」と笑顔を見せる。