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尼崎市長期実践型インターンシップ VOL.7~天然温泉蓬莱湯~

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天然温泉蓬莱湯
源泉掛け流しの天然温泉銭湯。「我が家のお風呂で過ごすように、気楽に立ち寄っていただきたい」との思いから、ゆっくり気持ちよく入浴してもらえる空間や雰囲気づくりをしています。通常営業のほかに、「銭湯bar」、野菜販売、落語の会などのイベントを多彩に開催するほか、敷地内で掘削される豊富な源泉を使用したスキンケア商品の開発・販売など、「銭湯」を超える新しい取り組みも実施。
■尼崎長期インターン生 円山洋輔さん、篠田拓哉さんにインタビュー
円山洋輔(右) 近畿大学 総合社会学部 総合社会学科 4回生
篠田拓哉(左) 京都産業大学 法学部 法律学科 3回生
インターンシップで担当した業務内容
尼崎温泉郷福湯めぐり(銭湯スタンプラリー)に加盟している銭湯体験レポート、SNSでの広報、割引クーポン券配布、銭湯に行くきっかけとなるイベントの企画など。
インターンシップのゴール
自分自身が銭湯を体験してみて、普段まちの銭湯になじみのない人が行ってみたくなるイベントを企画・実施すること。
-インターンを始めようと思ったきっかけは?
円山さん 大学4回生の10月だったので、インターンシップよりも就職活動しなければならない状況でしたが、就職ではなく、他にやりたいことがありました。それは「日本文化の再興」です。自分には何ができるだろうと模索していた時、今回のインターンシップを知りました。代表の稲さんにお話をうかがって、日本のお風呂文化に魅力を感じたので、インターンシップに参加することにしたんです。
篠田さん 「企画をどうやってつくるんだろう? 学びたい!」という気持ちがあり、そのためには経験が一番だろうと参加しました。
-天然温泉蓬莱湯を選んだ理由は?
円山さん 「日本文化の再興」に取り組みたいと考えていた私にとって、選択基準は「日本文化」「まちづくり」の2点のみ。いずれにも合致するのが天然温泉蓬莱湯でした。稲さんのエネルギーの強さと寛容さにひかれ、ここでなら自分の好きなように活動させてもらえると直感的に感じました。
篠田さん 稲さんがいろんなおもしろい企画を実施していると知り、「どうやって企画をつくっているのか」「成功につなげるためにはどうしたらいいのか」について学べると思いました。
-印象に残る仕事はありましたか? その感想も教えてください。
円山さん インターンシップの最後に実施したイベント「江戸湯屋体験 三助風呂」です。「三助」は背中を流すだけだから簡単だろうとタカをくくっていたのですが、お客さま相手に行うととても難しい。どのタイミングで終了すれば良いのか、どんな会話をすれば良いのかなど、心配事がいろいろとありました。最終的には、お客さまに喜んでいただけたので良かったです。この経験を通して、現代では存在しなくなった「三助」を知ることができたことと自ら発案して実行できたことが、自分にとって非常に価値がありました。単発の企画でしたが、銭湯を盛り上げる1つの取り組みとして化けるのではないかと考えています。
篠田さん インターンシップ終盤で実施した「ボクシングジムとのコラボイベント」。インターンシップ前半ではお客さまのニーズを考えたり分析したりできていませんでしたが、その経験を踏まえて、新しいものを生み出せて良かったです。また、同じインターン生の円山さんが企画したイベント「江戸湯屋体験 三助風呂」はすごい!歴史が深いことや関西にはなかった文化、現代にはない文化だと知り、これを尼崎でずっと続けていったらおもしろいし、良いビジネスになるのではないかと思いました。
-インターンシップを経て、「自分が成長したなあ」と思うところは?
円山さん 最も大きな学びは、何事も小さく始めることが大事ということです。これは、稲さんと一緒に過ごしたことと、三助イベントを自分で行ってみて理解できたこと。これまでは「時間をかけて完璧なものを提供しなければならない」と考えていましたが、それではいつまでたってもできないと痛感。まずは小さくていいから「やってみる」。そこから、膨らませていけばいいのだと学びました。
篠田さん 二ーズを分析して何が必要かを、しっかり考えて実行することが大切とわかりました。チラシを一枚作るにしても、目を引くものにするのか、安心してゆっくり手に取って読んでもらえるものにするのかなど、ニーズに合わせて考えて作ることができるようになったと思います。
-今回のインターンシップで学んだことを、今後どのように生かしていきたいですか?
円山さん インターンシップで得たつながりを広げ、銭湯を盛り上げるための仲間を募っていきます。
篠田さん ニーズを分析したり振り返ったりすることが大切だと気付けたので、これからも一日一日の振り返りをきちんとしていきたいですし、就職活動にも生かしたいです。
-最後に、尼崎で働いてみた感想を教えてください。
円山さん 尼崎と言えば世間一般では、「ダウンタウン」「ガラが悪い」。そんなイメージを持っていましたが、大きな間違いであったと知りました。尼崎の人たちは、誰よりも尼崎を愛しているし、誰よりも魅力的なまちにしようと考えています。インターンシップに参加していなければ、一生気付けなかったことかもしれません。働いたことでまた一つ、新しい魅力を知れました。今ではどっぷりと尼崎に浸かっています。
篠田さん 15軒の銭湯を巡ってみて、番頭さんはみんな優しいと思いました。空気が柔らかくて明るい雰囲気があります。

■続いて、代表 稲 里美さんにインタビュー
稲 里美 30代から天然温泉蓬莱湯の経営に父娘で従事。2012年に父から経営を譲り受け、代表となる。銭湯の付加価値をつくるさまざまなイベントや温泉水を利用したスキンケア商品の開発・販売などを行ってきた。
-インターン生を受け入れようと思ったきっかけは?
尼崎市長期実践型インターンシップが、ミスタードーナツの宣伝じゃないけれど、「いいことあるよっ!」という感じに聞こえたんですね。「何かが変わるかも」と感じてしまったんです。やっぱり人間というのは、ずーっと同じ脳みそで考えていると、同じアイデアが浮かばないもの。「三人寄れば文殊の知恵」じゃないけれども、いろんな人の頭、特に学生さんの柔らか頭を活用すれば、お互いにとって良いほうに向かうんじゃないかなって思ったんです。それと、一昨年は売上が上がって、ちょっとあぐらをかいていたら、昨年はガクンと落ちたんです。お風呂屋さんは現金商売なので、お客さまが足を運ぶかどうかで、ダイレクトに売上が変わるので、これは何とかせねばと。温泉水のスキンケア商品を開発したので、どう拡散するかも含めて、新しいチャレンジに向かっていこうと思っていたタイミングでした。
-インターン生の円山さんの活躍ぶりはいかがですか?
文章のセンスがよく、本を読む習慣があるので、チラシでもとても素敵に作ってくれました。インターンシップによって、「今何を要求されているのか」を瞬時に理解し、行動できるようになったのではないでしょうか。ただ、飲み込みが早い分、愚直にコツコツと仕事することが苦手なようなので、日々コツコツと畑を耕すように粘り強く、仕事に打ち込む訓練をしていくといいかなと思います。
-インターン生の篠田さんの活躍ぶりはいかがですか?
礼節のある子やなぁと思いました。学生にしては珍しく、自分だけがもらいっぱなしじゃなくて、相手にも何かをあげようとするところがいい。行動力もある、言われたことを一生懸命、素直に取り組む。チラシは最初うまくいかなかったけれど、今はぱっと目を引くようなものが作れるようになってきたのではないでしょうか。もともと持っていたものが、磨かれたのではと思います。改善してほしいところで言うと、読書をもっとするといいのでは。読んでも4~5年経たないと、読んだ本の熟成や発酵はしにくいけれど、だまされたと思って1000冊くらい読んでもいいんじゃない?「これは」という気になって持っておきたい本もきっと出てくるから、その本と出会う旅だと思ってやってみたら?その人柄の良さを生かして、さらに教養を身につけて、もっと社会に役立つ人間になっていってください。
-職場に変化はありましたか?
今までは「人を受け入れることは“コスト”や」と考えていたんです。インターンシップを通して、そうではなく、「人は潜在的な“莫大な資産”である」と思いました。売上や拡散力のある能力を秘めているというか、人と人との化学変化が起こるということを経験しました。蓬莱湯は家業でやっていたので、外から人を受け入れたことで、「自分の店、自分の商売」という感覚から、会社組織のような公的な組織になっていく必要もあるという感覚も掴めた気がしています。
-受け入れた成果はありましたか?
イベントを企画して、成功させて、尼崎経済新聞や読売新聞に載りました。円山さんの発信でツイッターのフォロワーも600人超え。篠田さんが自分で作ったチラシを一軒一軒回って500部ほどポスティングして、結果的にそれを見てお客さまが増えました。認知度が上がって、特に小学生や若いお客さま、親子連れで来てもらえるようになりました。
-インターン生の円山さん、篠田さんへメッセージをどうぞ!
若い、まだまだ未完成なうちに、いろんな人の意見を聞いて、自分にフィードバックしてほしい。そして、自分の強みを生かしながら自立した人間に育って、社会貢献していってください。一人一人が貢献に集中して、自家発電できる人間が増えれば、世の中はきっと変わっていくと思うから。
-最後に、尼崎で働く魅力について教えてください。
庶民のまち・本音のまちだから、大学で勉強していることを実地で体感できることがすごく特徴的だと思います。4年間の学生生活で、良い意味ですごく異様な異次元な体験ができる!本音でできる尼崎で、体感型のインターンシップをすることで、学問の建前と仕事で必要とされている生の人間力とはどういうものかを大いに学べる場になると思います。世の中の会社は、大企業よりも中小企業がほとんど。中小企業で何十年も生き残っている会社は、何か生き残っている理由があると思うので、それを体感できる絶好の学びの機会でもあると思います。
天然温泉蓬莱湯
尼崎市長期実践型インターンシップ報告会 「チームあまがさき」構想も(尼崎経済新聞)
https://amagasaki.keizai.biz/headline/456/
尼崎市長期実践型インターンシップ
http://amagasaki-intern.com/

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