尼崎の橘(たちばな)公園(尼崎市東七松町1)で1月16日、「阪神大震災鎮魂と防災の集い」が開催された。
2003年から毎年1月16日に行われている同イベント。今年も多くの来場者が、グラスキャンドルに火をともし、尼崎で震災の犠牲となった49人の魂へ鎮魂の祈りをささげた。
イベントでは、主催者の尼崎琴の浦ライオンズクラブ会長、原岡謙一さんが「20年を振り返り、思いを未来へつなげ、震災を風化させないよう語り継いでいきたい」とあいさつし、市立尼崎高等学校吹奏楽部が未来への思いをのせて「明日があるさ」などを演奏した。その後、メーンキャンドルへ火がともされ、地震発生12時間前となる16日17時46分に参加者による黙とうがささげられた。
稲村和美尼崎市長は「震災当時は神戸で学生生活を過ごしており、学友や関係者など多くの犠牲が出た。震災は多くのものを失うが、震災で多くの出会いや経験、学びがあった。20年の節目にしっかりと学びをつなぎ、安全安心な街づくりに全力を尽くしていきたい」と話した。
会場では、防災グッズの贈呈や防災マップの配布なども行われ、参加者はキャンドルの光の中で震災へ思いをはせると共に、防災知識の向上を誓った。
勤務先が被災したという参加者の岡万亀子(まきこ)さんは「震災から20年ということで初めて参加した。会社で使い捨て食器などを扱っていたため、震災後需要が急激に増え、出荷作業に追われた。物流が寸断され入荷もままならず苦労した」と振り返る。
経営していた飲食店が被災したという夫婦は「倒れた食器棚の片付けに追われていた。当時2カ月だった息子が先日成人式を迎え、震災20年と重なり感慨深い」と話していた。
同イベント主催者の原岡さんは「運送会社を経営しているので、地震発生後、物流が困難になり、ライフラインが止まる中、従業員と一緒に寝る間も惜しんで作業した。会社のトラックで神戸方面へ向かう途中、川を渡るたびに被害状態がひどくなっていくことに衝撃を受けた」と当時を振り返り、「震災で学んだ教訓を生かし、防災マップなどで知識を高め、何かあった時でも慌てずに行動してほしい」と呼び掛ける。