尼崎の「あましんアルカイックホール・オクト」(尼崎市昭和通2、TEL 06-6487-0800)で9月23日・24日、「関西歌劇団 第99回定期公演」が開催される。
1949(昭和24)年、指揮者の故・朝比奈隆さんを中心に関西の声楽家が集まり、旗揚げ公演「椿姫」で発足した同団。イタリアやポーランドと合同でグランドオペラを開催したり、歌舞伎調の「お蝶夫人」や「夕鶴」といった邦人作品の初演に力を注いだりと、国内のオペラを改革し、独自の伝統を築いてきた。団員数は約250人。
今回の演目は「白狐(びゃっこ)の湯」「赤い陣羽織」の2作品。「白狐の湯」は谷崎潤一郎原作で、意中の女性に化けて湯浴みする狐の虜となる男の物語をミステリー・サスペンス風に描き、当時先駆的と評された作品をオペラ化したもの。「赤い陣羽織」は「夕鶴」の木下順二原作で、女好きで派手な赤い陣羽織を羽織った代官と、代官に美人女房を寝取られまいとする「おやじ」の攻防を描く喜劇。いずれも演奏時間が70分程度の短編オペラで、どこか懐かしい俗謡的なメロディーが多く取り入れられており、オペラ初心者にも親しみやすいという。
同団理事長の井上敏典さんは「両作品とも1955(昭和30)年に大阪と東京で本団が初演し、大成功を収めた作品で、特に『赤い陣羽織』は、100回以上の上演を数える。創作オペラのメッカといわれてきた本団にとって、原点回帰ともいうべき公演」と話す。「当時の演出家、武智鉄二さんの斬新さが話題を呼び、記録的な上演回数を生み出したが、当時の演出を知る団員はもう在籍していない。そこでオリジナル演出の経験を持つ名誉劇団員の林誠さんに一肌脱いでもらい、後輩に継承してもらうことになった。大ベテランの林さんとその弟子の橋本恵史(けいし)さんが、それぞれの持ち味を生かし『おやじ』を演唱するので、両日鑑賞すれば、よりお楽しみいただけるのでは」とも。
「日本人だからこそできる日本人の心と笑い、初代劇団長の朝比奈さんと武智さんの目指した総合芸術オペラの在り方に、改めて真正面から取り組む舞台。『ミステリー悲劇』と『意味もなくおかしい喜劇』、初演時の空気を楽しんでほしい」と来場を呼び掛ける。
開演時間は、23日=18時、24日=14時。入場料は、S席=8,000円、A席=6,000円、B席=3,000円。全席指定。