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尼崎のミニシアターに映画「美しい星」吉田監督 作品への思い語る

壇上で挨拶する吉田監督

壇上で挨拶する吉田監督

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 尼崎の阪急塚口駅近くにある映画館「塚口サンサン劇場」(尼崎市南塚口町2、TEL 06-6429-3581)で6月25日、映画「美しい星」ティーチインが開催され、監督の吉田大八さんが登壇した。

「みんなの中にある映画の方が大きく豊か。(感想を聞くと)自分の中の映画も更新される感じがしてすごく楽しい」と吉田監督

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 「ここに来るのを楽しみにしていた」と話す吉田さん。5年前の監督作「桐島、部活やめるってよ」上映終了後、同館で開催されたティーチインに登壇した同作品プロデューサーの佐藤貴博さんからイベントの白熱ぶりを聞き、「次回こそは自分が登壇したい」と思っていたという。

 当日、地下1階のイベントスペースでは約50人の参加者が集まり、吉田さんとプロデューサーの朴木(ほおのき)浩美さんを迎えた。「学生の頃から作りたかった作品が、ようやく製作できると言われた時はどんな気分だったか」との質問に、吉田さんは「正直、びっくりした。ずっと開くはずがないと思っていたドアが突然開いた感じ。うれしい半面、まだ準備ができていない、大変だ、という気持ちもあった。最後は、この作品を撮らずに死んでしまうのは嫌だという気持ちが勝り、やらせてほしいと返事した」と明かした。

 ストーリーについての質問には、「ネタバレ」を慎重に避けつつ「ある普通の家族がいて、一人一人が火星人、水星人、金星人とバラバラに目覚め、地球を救うとか、地球の何か間違っていることを正すために自分は目覚めたのだと思い始める。彼らが本当に宇宙人なのかどうかは最後まで明かされずにある結末を迎える」と解説。「三島由紀夫さんのSF小説ということで当時話題にはなったが、SFファンからも文学界からも距離を置かれたらしい。どのジャンルにも属さないことがかえって、三島さんの本質に近いのでは」と原作を評価した。

 吉田さんは、主演のリリー・フランキーさんの「火星人のポーズ」が生まれる過程や、リリーさんの「神がかり的」演技にも触れた。質問が「原作では核戦争がテーマだったが、なぜ映画では環境問題になったか」という点に及ぶと、「実は最初、3・11(東日本大震災)と原発事故をテーマにシナリオを書いていたが、原作が持つ『同時代』感覚から離れていく気がした。原作が描いたのは、米ソの核軍拡が世界的な脅威としてものすごい勢いで広まり、それに対抗しようと日本で立ち上がる宇宙人。一方、今の私たちにとって原発や核はすぐそばにあり、実際に投票行動で意思を反映できる問題になった。宇宙人目線で地球を考えた場合、人物たちとの距離感という意味で『気候変動』をテーマにした方がふさわしく思えた。それでも、誰しもにとって重要な転換点となった『3・11以降』であることは作中に残してある」と話した。

 吉田さんは制限時間を超えて参加者からの質問に答え、「まだまだ皆さんと話したい。また呼んでほしい」と名残を惜しみながら阪急電車で京都での舞台あいさつに向かった。

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