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尼崎・ピッコロ劇団新作「メトミミトヤミ」 小泉八雲と妻セツの怪談

暗がりの中で行われる舞台稽古風景

暗がりの中で行われる舞台稽古風景

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 兵庫県立尼崎青少年創造劇場ピッコロシアター(尼崎市南塚口町3、TEL06-6426-1940)で6月4日~15日、ピッコロ劇団第55回公演「メトミミトヤミ~小泉セツと八雲の怪談~」が上演される。

劇作家の角さん(左)と演出の鈴木田さん

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 同作は、「怪談」で知られる小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と妻・セツの物語。セツが夜ごと語り聞かせる怪談に耳を澄まし、八雲が作品「怪談」を執筆していく様子をセツの視点から描く。松江藩士の娘だったセツは、幼いころから霊的な物語を数多く聞き集めており、「むじな」「雪女」「耳なし芳一」といった八雲の「怪談」はセツの口述から生まれたことが知られている。劇中では、夫婦が暗闇で対話を交わすうち、現世と来世、光と闇が入り交じる「異界」が立ち現れ、目に見えないがこの国が本来持つ「ヨキモノ」というテーマを浮かび上がらせるという。

 脚本は、尼崎出身で第4回「近松賞」を受賞した劇作家の角(すみ)ひろみさんが同公演のために書き下ろした新作。角さんは同賞受賞作「蛍の光」(2011年)、「虎と月」(2012年)に続き、ピッコロ劇団への作品提供は3作目となる。演出は同劇団の鈴木田竜二さんが手掛ける。

 同作を企画した鈴木田さんは「明治の日本に来た八雲と、雪深い山陰で生まれ育った士族の娘セツとは、言葉もうまく通じない異文化の人間同士でありながら、相手への安らぎ感を得て結び付いた。この2人の話を、『他者との関わり方』を題材にした作品にできないかと角さんにお願いした」と振り返る。「移民問題やヘイトスピーチといったニュースを見るたび、人への想像力、思いやる気持ちの減退を感じ、『人への不寛容』という問題意識からこの題材に行き着いた」とも。

 角さんは「暗がりで、2人にしか分からない言語『ヘルンさん語』で夜ごと交わされたという八雲とセツのコミュニケーション方法は、とてもセクシーで異常。八雲は物語の細部にわたり繰り返しセツを質問攻めにし、セツも次第に化け物を見るようになる。2人の異質なやり取りの中で作品が作られていったことが面白いと思い、劇も同様に組み立てた。『ヤミ』とタイトルにあるように、2人が信じた『異界』から八雲の世界が見えてくるような作品にしたい」と話す。

 実際の舞台稽古でも、役者たちは足元しか見えないランプの明かりだけを頼りに、互いの距離を感じ、「耳を澄ます」ことに特化した演技を研究しているという。

 一般公演は6月4日、5日、9日、10日、11日、12日。開演時間は日によって異なる。入場料は一般=3,500円、大学・専門学校生=2,500円、高校生以下=2,000円。全席指定。兵庫県内の中学生約5000人を無料招待する「わくわくステージ」を別日程で開催する予定。

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