阪急伊丹駅前のサンロード商店街に複合テナント施設「POT」(伊丹市中央5)がオープンして1カ月がたった。
「POT」施設内の様子。入居するほとんどが「初の実店舗」だといい、9月にはアパレル、ハンドケアショップもオープンする。「引き続き、新たな物件の準備も進めたい」と大原さん
まちづくり会社の一般社団法人「GREENJAM」が立ち上げた、廃スペースを活用した創業支援プロジェクト「suki-ma不動産」によりオープンした。総面積は約85坪で、入居者が必要な坪数だけ借りて開業できる。
「GREENJAM」代表の大原智さんによると、伊丹はJR・阪急両駅が隣接するため中心市街地が1カ所に集中し、空きテナントが少ない上駅前エリアの賃料は「安くはない相場」だという。「伊丹はイベントなど地域活動が盛んな街。さまざまなスキルや地元への思いを持つ『地域プレーヤー』が活動の裏方として活躍し、中には経験を生かしてプロへ進む人もいる。開業に挑戦したいと考える人を輩出する環境は育っているのに、挑戦するには決して優しくない地域だと感じた」と「POT」誕生の経緯を話す。
異なるジャンルのミュージシャンが多数出演し、さまざまなマルシェなども展開する無料音楽フェス「ITAMI GREEN JAM」を手がける同社。多種多様なコミュニティーが共存する「ITAMI GREEN JAM」の概念を日常に再現しようと、空きビルを活用し2016(平成28)年に開業した「GREENJAM BUILDING」も、きっかけの一つだという。「カフェやレコード店が入り、フェス、音楽、カルチャーに興味がある人が集い、われわれの活動に大きく作用したが『当初掲げた概念ではない』との思いもあった。目指すのはさまざまな価値観を持つコミュニティーの点在を地域に加速させる仕組みづくり。お金や土地に色はなく、人それぞれが色を付け共感し、また異なるコミュニティーが乱立すればいいと思った」と振り返る。
「POT」を構える物件は、長年伊丹を知る人が「はっきり覚えていない」と言うほど放置されていたスペース。大家側に「地域に恩返しがしたい」との考えがあり、大原さんの「次世代プレーヤーを支援してほしい」との思いに深く共感し、出店を決めたという。現在は、イタリア料理店「ELICA」、「きのね写真館」、花屋「HOSI+」、ミュージックビデオ撮影・編集などを手がける「VAKEMONO.」が入居。「1坪レンタルキッチン」も設置する。
大原さんは「SNSやECサイトのみで活動する人から『いつかは店舗を持ちたい』と聞くことはよくある。挑戦を促進する環境を整え、自分のスキルを生かして地域にサービス提供できる人が増えることは、シンプルかつ本質的な地域活性化。集まった人とスキルを掛け合わせ、新たなサービスやビジネスが生まれれば。そういった機会も創出していきたい」と意気込む。
営業時間、定休日は各店舗で異なる。