尼崎市職員を中心とするグループ「尼崎版ナッジ・ユニット」が、設置から3周年を迎えた。
「尼崎版ナッジ・ユニット」のメンバー。市職員を中心に構成され、大阪大学特任教授で「尼崎市学びと育ち研究所」所長の大竹文雄さんもアドバイザーとして参加する
2019年10月18日に市の「自主研修グループ」として発足した「尼崎版ナッジ・ユニット」。命令や強要などではなく、人々を自発的に望ましい行動へ誘導する「ナッジ理論」を用いて、「暮らしやすさ」やマナーの向上、地域環境の改善につながる取り組みを展開している。
サービスセンター内に「お近くのコンビニで」「自動交付機を使うと100円安い」と掲示することで窓口の混雑緩和や業務の効率化につながったり、不法投棄が多発するエリアに「防犯カメラで特定中」などの看板を設置したことで不法投棄減少につながったりするなど、さまざまな効果が表れているという。市内商店街で実施した「足跡マーク」を使ったソーシャルディスタンスの確保、公共施設入り口からアルコール消毒台へ人を誘導する矢印の設置は、昨年8月に世界保健機関(WHO)のホームページで「新型コロナウイルス感染拡大下でのナッジ理論活用例」として掲載された。
同グループメンバーでこども青少年課の江上昇さんは、WHOから連絡が来た当時「営業や詐欺なのでは」と半信半疑だったという。「『市役所に電話するなんて大胆だな』と思いながら話を聞くうち『本当なんだ』と分かり、その後メールで正式な依頼が届いた時は『われわれ海外進出するんかい』とメンバーみんなで盛り上がった。実際に掲載された記事は英語だったので、メンバー全員苦い顔になったが、分担して翻訳するなどしてワイワイと楽しんだ」と江上さん。
現在新たな取り組みとして、商店街から上がった「お札を出す際に指をなめる人がいて、新型コロナ禍の中で消毒対応に困っている」という悩みから生まれた「指ペロ禁止イラスト」の掲示も進行中。設置した店舗から「効果があった」という声が届いているという。
江上さんは「新型コロナ禍が落ち着いたら、通知文を工夫することで健診・検診受診率向上へつなげる『受診勧奨ナッジ』を実装していきたい。ワクチン接種率を上げる取り組みも進められれば」と話す。「現在、環境省主催の『ベストナッジ賞』へエントリーしている。選ばれるか分からないが、『尼崎版ナッジ・ユニット』の名を全国に広められるよう頑張りたい」とも。