尼崎の商店街、三和市場にあるイベントスペース「とらのあな」(尼崎市建家町、TEL06-6411-0806)で1月10日、「日本映画生誕120年酒場」が開催され、日本映画ファンらが深夜まで熱く語り合った。
日本映画の第1作から初トーキー作品、初めての総天然色映画へと日本映画の歴史が紹介され、さらに今年封切られる新作も紹介。ただし、主なスピーカーはあくまでも客の一人で、専門家が「教える」のとは一味違うのが同イベントの特徴だ。
同スペースでは土曜に月3回、特定のテーマを設定してマニアが集まり語り合う「酒場」イベントを開催。近隣だけでなく千葉や長野といった遠方からも客が訪れ、多い時には100人を超えるなど盛り上がりを見せている。2011年5月にスタートし、テーマ設定のマニアックさ、面白さに加え、アマチュアでありながら専門家も舌を巻くほどの知識と熱意を披露する発表者のトークに引かれ、毎回ファンを増やし続けているという。
これまで開催されたのは、怪獣映画ファンが集う「怪獣酒場」に加え、スプラッター映画について語る「血まみれ酒場」、ブルース・リーのファンが集う「激突! ドラゴン酒場」など。コアな怪獣ファンが多く集まっていることを聞きつけた怪獣玩具メーカーが参加し、青果店や鮮魚店の売り台にフィギュアを並べて販売する「怪獣市場」をスピンオフ開催したり、怪獣映画の名作に出演した大村崑(こん)さんや麻里(まり)圭子さんといった名優たちもゲスト参加したことがある。
企画や運営に参画する酒場の中心メンバーも個性派がそろっている。長嶺さんは大学でも講師を務めるほど映画史や映像論に造詣が深く、次々とマニアックな企画を繰り出すアイデアマンだが「集まった人々がそれぞれの専門知識を持ち寄り、さらに面白い酒場企画が生まれる」という。同じく映画マニアのDJ.L.A.H.(ラー)さんは「自分の好きなことを話すのはとても楽しい。最初はトークが苦手だったが、好きである気持ちを込めて伝えることが大切。若い女性にもっと来てほしい」と参加への思いを語る。吉田さんは酒場に通うために名古屋から近隣に移り住んだほどの同イベント愛好者。「若い人、特に女性をもっと巻き込んで盛り上げていきたい。シャッター街となっている三和市場の振興にも一役買いたい」と語る。
日本映画好き、怪獣好き代表でもある主催者の森谷さんは「もともと、シャッター街である三和市場ににぎわいを取り戻そうとスタートした『怪獣酒場』から発展したイベント。古びたシャッター街でひそやかに盛り上がっているアンダーグラウンドな雰囲気も魅力の一つ。近隣だけでなく遠方からの客が中心となって開催するケースも多く、確実に地域振興につながっている手応えを感じる。ここをきっかけに、個性的でこだわりのある店舗が軒を連ねる中野ブロードウェイのミニ版のような商店街に生まれ変わらせたい」と意欲を見せる。
1月の開催予定は、メカ怪獣について語る「機械獣王酒場」(24日18時~)、銀幕を飾った猫について語る「猫酒場 銀幕を飾ったニャン公ども」(31日18時~)。入場料は各回500円。2016年の尼崎市制100周年に向け、尼崎を舞台にしたオリジナル怪獣映画の制作も進行しているという。