「地震」というキーワードでつながった兵庫県と和歌山県。各地の地元紙である神戸新聞社と紀伊民報が連携し、今回初めて「防災」をテーマとしたイベントを実施しました。和歌山県情報化推進協議会(WIDA)、神戸の教育系スタートアップ企業の(株)omochi、ベネッセコーポレーションとの連携のもと自ら「問う」力を養う、探究ワークショップです。
プログラム概要
タイムテーブル
阪神・淡路大震災から30年となる神戸、南海トラフ巨大地震に備える和歌山から、プレイベント・本イベント合計約40人にご参加いただきました。防災に関心の高い中高生や教員らが集まり、データや情報の扱いなど探究学習で必要とされる力を養い、地域や世代を超え、一緒に問い学ぶ時間となりました。
まずプレイベントとして12月21日に (株)omochi代表、土井仁吾氏の指導のもとオンラインワークショップを実施。テスト勉強で疲れた時や仕事を頑張ったあとなど、日常で自分の力となる食を入口に、被災時の食について考えました。日常と有事とのつながり、被災数日後と被災数か月後など、被災の段階を分けた想像力や問う力が試されました。
オンラインワークショップの様子。
自宅避難の場合か指定避難所にいる場合かなど想像しながら、自身の身体と心の両方を守る防災を考えました。
同26日には、神戸会場(神戸新聞社神戸本社)と和歌山会場(串本古座高校)をオンラインでつなぎ講演とワークショップをしました。
阪神・淡路当時、取材にあたった、神戸新聞NIE・NIB推進部の三好は講演で、「震災を知らない世代こそ震災を語るべき。記憶のバトンをつなぎたい」と強調。30年前、コンピューターシステムがダウンした神戸新聞社が、京都新聞社の全面協力で新聞発行にこぎ着けるまでを振り返り、災害文化の継承など震災から得た教訓を語りました。
神戸会場で当時を振り返る三好
和歌山会場で中継に聞き入る参加者たち
石川県金沢市在住の合同会社楽しい学校Second前田健二氏の指導のもとワークショップを実施しました。ワークでは見え方の違い、考え方や背景の違いを知るために「問う」ことから始まりました。ことばや、ことば以外の印象も含めたコミュニケーションの役割を学びながら、街中や被災地で生じた事例で問いを設計するワークもありました。
和歌山会場でのワークショップの様子
中継を聞きながらワークショップに取り組む神戸会場の様子
参加者のなかには、学校の課題で防災食を企画している高校生や、高校生の防災意識を向上させる取り組みに関心のある教員もいました。ほか、「阪神・淡路大震災」当時の被災状況を経験者から初めて聞いたという高校生や、「当時を思い出しました。」という教員もいるように、世代や視座の異なる人が集りました。「グループワークは難しかったが、価値観が全然違う人としゃべる点では、災害時の避難生活と同じようなものにも思えた。」という高校生の意見もありました。
参加した高校生の意見紹介
「講演では、初めて見る阪神・淡路大震災の写真も多くあり、さらに実際に震災を目の当たりにした方から話を聞くことで当時の現状をより鮮明に知ることができた。また、それがとても恐ろしく感じた。グループワークは難しかったが、価値観が全然違う人としゃべる点では、災害時の避難生活と同じようなものにも思えた。また、クラスメートではなく他校の方たちとのワークというのも新鮮でよかった。今回は二つの会場をつなぎ、同時進行するイベントだったが、今後もこういったイベントがあれば、他会場の生徒や先生ともっとコミュニケーションを取れたらうれしい。」
本イベント実施にいたる想い
高校生に必修化された探究学習で必要とされる「問う」力は、さまざまな物事に対する「おもしろさ」を感じ取るための力でもあると思います。地元の人とのお話しから、目の前にあるモノからでも、「おもしろい」地元の情報がたくさんあります。そしてそんな魅力を伝えながら、これからの時代を楽しく生きるための力や、いざというときの「防災」についてみんなで考えるきっかけを作りたいと思い、地方メディア同士の連携のもと探究ワークショップを実施いたしました。
本事業は、和歌山県、兵庫県双方の地元の文化をけん引する地元の企業の応援によって実施できました。ぜひ応援企業の被災当時の歩みや、地元から地域を超えて日々文化をつくる姿勢を特設サイトよりお読みください。次世代へ「想定を超える災害が続いていますが、日常においても常に小さな想定外は起こるもの。失敗を糧にしながら前に進むことが、次の備え、成長につながる」といった力強く温かいメッセージも必読です。
https://www.agara.co.jp/school/tankyu202412/?pk