今回は、ともに1歳の息子がいる父親である『むこたん』編集委員の2人が、子育てをめぐって対談しました。
武庫之荘の薬局「まごごろ薬局」オーナー、福田惇(34)
武庫地区の高校教諭、勝部尚樹(32)
福田 自身も子どもも年齢が近い2人ですが、父親としての状況はまったく違います。僕は薬局を経営していますが、子育ては基本的に妻にお願いして、家に帰ってから少し見ている、というような感じです。
勝部 僕は、妻の職場復帰とバトンタッチする形で、今年度の4月から育児休業を取得中です。家で子育てをずっとしている状況です。
夜起きなかった父親
勝部 (対談中)2人の子どもが歩き回っています。福田さんのお子さんも元気ですね。
福田 うちの子は全然夜寝なくて大変です。今でも夜中は2時間ごとに起きます。対応は妻がやってくれているので助かっていますが。
勝部 それは大変ですね。うちの子は今は夜起きないんです。
福田 うらやましい!
勝部 夜中、福田さん自身は起きますか?
福田 僕はとても音に敏感なので、すぐに起きるんです。勝部さんは起きましたか?
勝部 妻は夜起きて対応していたのですが、僕はまったく起きなかったんです。当時は妻任せにしながら、勝手に「やっぱり赤ちゃんの声は母親にしかわからないんだな」と思って自己正当化していました。でも、それが育休に入ってから逆転して、僕がすぐ起きるようになったんですよ。
福田 やはり意識の問題ですか?
勝部 意識が変わったというより、長く一緒にいることで反応するようになりました。母親か父親かは関係ないんですよね。
福田 僕はそのあたりを言い訳していて、「息子は母親のほうが好きやから母親に見てもらったほうがええねん」と思っていたのですが、実際子どもと関わっているかどうかが大きいんですね。
子ども中心の孤独な生活
福田 勝部さんは育休をとられて、今の生活をどう感じていますか?
勝部 やはり、この時期の子どもを見ることはなにより楽しいですね。ただ、仕事と違って子ども中心の生活になり、自分の好きなようにまったく動けなくなりました。そこは大変ですね。
福田 僕は休日に1人で子どもを1時間見ているだけでかなりしんどいです(笑) これを毎日朝から晩までと考えたら相当きついなと思います。子育てをこれからする旦那さんに向けては、「仕事より子育てのほうが大変」と思っていたほうがいいです。
勝部 あと、今年はコロナの影響で、なかなか人に頼ることが難しいですね。子育て広場や一時預かりなどの施設も、感染症対策で利用の制限をしています。家にいて育児をすると、人と会わない、誰とも会話をしない、帰宅した妻とだけ話す、という日々です。それがコロナで拍車がかかった感じです。
福田 1人でずっと見ないといけない状況はしんどかったのではないですか?
勝部 そうですね、社会との繋がりや接点のなさは辛かったです。職場との接点もなくなり、社会から置いていかれるという不安は大きいです。女性はもっと長い間職場を離れている人も多いと思うのですが、周りに男性育休をとっている人がいないので、育休中や復職後のイメージも持てないし、余計に不安でした。
福田 いろいろな社会とのつながりが途絶えますよね。ママ友はいますか?
勝部 ママ友はほとんどいないですね。
福田 そうですよね。僕もママ友の輪には入れないです。公園でお母さん同士が話していても、僕は端っこの方にいます。
勝部 すごくわかります。
福田 休日に公園に連れて行っても、話しかけることができないので、ひたすら息子だけを見ています。人見知りもあり、パパの公園コミュニケーションは難しいです。
勝部 気質はあると思うのですが、妻が連れて行くとたまに話しかけられるそうなんです。月齢が同じくらいとか、どこに住んでいるとか。ただ、僕が連れて行く回数のほうが圧倒的に多いのですが、僕はこれまで一度も話しかけられたことがありません。
福田 僕もありません。たぶん、話しかけないでくれというオーラが出てるんですよ。こちらからあいさつすることから始めてもいいかもしれないですね。
勝部 平日に父子で出かけることはまだ珍しいので、今日だけ公園に来たお父さんかな、と思われているのかも。
福田 父子に対する周りの目でいうと、僕は息子を乗せてよく自転車をこいでいるのですが、みんな温かいですね。子ども連れて営業行きたいなとか思います。
男性の育休取得率7%
福田 やはり男性で育休を取るのはすごい、と思ってしまいますね。
勝部 厚生労働省の調査によると、男性で育休をとっている人は7.48%(2019年)です。ただ、そのうち4割近くが「取得日数5日未満」。長く取得している人は本当に少ないですね。
福田 5日未満ですか!勝部さんはどうして育休をとったんですか?
勝部 実はもともと自分が育休を取るという発想はなかったんです。ただ、妻と相談するなかで、このままでは子育ては妻任せになるな、という思いが強くなっていきました。また、妻も早期の復職を望んでいたので、妻と交替で取ろうと思いました。
福田 家庭での話し合いの結果ということですね。
勝部 あと、これから数十年ずっと働き続ける。かたや育休は、今の時期しかとれない。長い目で見たときに、今しかできない経験をしようと思うようになりました。
福田 夫婦とも育休を取って、それぞれ子育てに向き合う時間をとることで、その後の子どもへの向き合い方も変わりますよね。育休で、子育ての考え方も変わりましたか?
勝部 単純に言うと、楽しくなりました。以前は妻に言われたことをする受け身な姿勢でしたが、今は子どもの成長や変化もよく分かるし、自分がやったことに対するリアクションも返ってくるし、可愛く感じて、子育てが楽しくなります。
福田 主体性は重要ですね。僕は子どもの世話をしたときに、ありがとうとかないの、とか思ってしまうんです。すると妻から「それ普通だから、あんたの子でもあるんだから」と言われるんです。それは、休日に子育てを「手伝っている」という感覚でいて、主体的ではなかったからだなと思います。育休を取って主体性を持つことは、円満な夫婦関係を保つためにも大事ですね。
勝部 育休を1年取ることは難しい職場が多いとは思いますが、数週間、1か月単位でも取ると考え方が変わってくると思います。
福田 男性には育休を義務化すべきという意見がありますが、それは大切だと思います。僕も絶対取るべきだと思うけれど、職場によって取れない現状があります。経営者である僕は改善する側なので、自分が積極的に取るくらいじゃないといけないのですが。
勝部 日本商工会議所の男性の育休義務化についての調査では、人手不足の業種を中心に、中小企業の7割が反対という結果が出ていました。
福田 自分のことを考えても、中小企業の社長が育休なんて取れないと思ってしまいます。ただ、取れなくても、いかに主体的に関わるかが大切ですね。自分が子育ての中でできることは何なのかを探すことが重要なのかな。
今から育児をする男性へのメッセージ
福田 やはり、子育てに対する主体性が重要です。そうなるまでには、おそらく何回か夫婦喧嘩もすると思います。そういうときこそ、互いにコミュニケーションを図って、自分ができることは何かを納得できるまで話し合って子育てをすることが大切なんだと思います。子育ては大変なところもありますが、子どもが笑っている姿を見ると、その大変さは帳消しになります。
勝部 主体性ということですが、育児はやってみたらできることがたくさんあります。できるようになれば、もっと楽しくなります。たとえば、赤ちゃんの泣き声で何を要求しているのか。俗説でお母さんにこそ分かるとか聞いたことがありますが、そんなことは嘘だなということがやってみてわかりました。実際に、第一責任者として育児をしている父親であれば、泣き声から赤ちゃんの要求が分かる、という研究があります。母親だろうが父親だろうが関係がなく、長く一緒にいて、やったらできるんですね。
福田 マインドですよね。俗説にまどわされないこと大事ですね。
勝部 基本的に、母乳を出すこと以外にできないことはないので。
福田 男性向けの、ミルクタンクが付いた授乳装置があるらしいのですが(製品化未定)、ほしいと思いました。あれで寝かしつけられないかなとか。それは冗談として、僕はどこか「父親にはできないこと」がたくさんあると思っていましたが、今回の対談を通してそういうのは関係ないんだなというマインドになれたのは大きいです。
勝部 父親の「子育てを手伝う」という意識についての話がありましたが、「イクメン」という言葉にも現れていますね。子育てをすることは当たり前だよねという意味で、「イクメン」という言葉、育児をする男性を特別視する見方がなくなればいいなと思っています。
福田 たしかに、そうですね!育てるの当たり前だよ、という空気になればいいですよね。
福田・勝部 今日はありがとうございました。
2020年10月7日@まごごろ茶屋
※当記事は武庫広報誌「むこたん」とのタイアップ企画です。