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尼崎市在住の落語家・桂吉の丞さん 文化庁芸術祭で優秀賞受賞

「吉の丞進学塾」について「内容は独演会と変わらない」としつつ、昔、大先輩に「独演会てな簡単に付けたらあかんよ」と言われたこともあり、名付けたという

「吉の丞進学塾」について「内容は独演会と変わらない」としつつ、昔、大先輩に「独演会てな簡単に付けたらあかんよ」と言われたこともあり、名付けたという

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 尼崎市在住の落語家・桂吉の丞さんが、本年度の第76回文化庁芸術祭大衆芸能部門(関西参加公演の部)で優秀賞を受賞した。

銭湯「天然温泉 蓬莱湯」で開かれる「ほうらい寄席きちっきちの会」。開始から10年になる

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 毎年秋に開かれる文化庁芸術祭の参加公演には、演劇、音楽、舞踊、大衆芸能の4部門があり、それぞれ関東と関西の部に分かれる。期間中に行われる公演から文部科学大臣賞(芸術祭大賞、同優秀賞、同新人賞)が選ばれ、昨年12月24日に結果が発表された。

 2002(平成14)年に故・桂吉朝さんへ入門した吉の丞さんは、尼崎に長年住み、ゆかりの深かった人間国宝の故・桂米朝さんの下で内弟子になった。

 受賞対象の公演は、昨年11月6日に動楽亭(大阪市)で開かれた「吉の丞進学塾」で、演目は「仏師屋盗人」「素人浄瑠璃」「米朝師匠と私」「一文笛」。同芸術祭の受賞理由として「丁寧な感情表現」や「魅力的な登場人物と軽快な語り口」が挙げられたほか、「『米朝師匠と私』では愛あふれるエピソードが聴衆の心を打ち、トリの米朝作『一文笛』できっちり締めくくり、会全体の流れが緩急のついた構成で見事」と評された。

 吉の丞さんは「今回の受賞は自分に関わる全ての方のおかげで、お客さまにも盛り上げてもらって感謝している。たまたま開催日が米朝師匠の誕生日で、大師匠ゆかりの話をした。芸歴20年。いまだに米朝師匠におんぶに抱っこでやらせてもらっている」と笑う。一方で「普段の芸を審査員に判断してもらうため、特別な独演会ではなくいつも定期的に行う会にした。この日は年に1、2回あるかないかというほど、はなし家とお客さまとの空気、自分の体調など全てがパチッとはまった」と当時の手応えを振り返る。

 大阪府堺市出身。「米朝師匠宅で20歳から3年住み込み修業をした流れで、尼崎に住んでもう20年。住めば都で居心地がよく、尼崎の北と南の雰囲気のギャップ、そしてバスの充実ぶりがたまらない。阪神バスに乗れば尼崎のどこへでもたいがい行ける」と言う。好きな場所に「武庫川髭の渡しコスモス園」を挙げ「あんないいところはない。秋になるとコスモスを見ながら落語の稽古をしている」と明かす。

 尼崎での活動も行う。銭湯「天然温泉 蓬莱湯」(道意町2)で、同じく米朝一門の桂佐ん吉さんと「ほうらい寄席(よせ)きちっきちの会」へ出演。2012(平成24)年に始まり現在も定期的に続いており、次回は1月28日を予定する。昨年は尼崎市総合文化センター アルカイックホール・ミニ(昭和通2)で、ユーチューブの米朝事務所公式チャンネルでの人気コーナー「マル秘ワールドニュース」に共に出演する、同門の桂米紫さんと二人会を行った。

 今年は40歳、芸歴20年の節目に当たる。「だからといって特別なことは考えていない。ひたすらお客さまに楽しんでもらえる落語をするだけ。ただ一つの抱負は、冷蔵庫を買うこと」と気負わない。

 3月4日に東リ いたみホール(伊丹市立文化会館、宮ノ前1)で「桂米朝一門 いたみ寄席」、13日に大阪・豊中市立伝統芸能館(岡町北1)で「岡町落語ランド」に出演予定。

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